
はじめに
新しい年が始まる1月。街は新年の装いに変わり、「今年こそは」という前向きな気持ちが満ちる季節です。気持ちも環境もリセットされやすいこの時期、保護者の皆さまの中には、「今年こそは生活リズムを整えたい」「子どもの成長につながる関わりをしたい」「去年できなかったことに挑戦したい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
新年を迎えると、大人も子どもも、自然と気持ちが切り替わります。「新しい年」という節目が、心機一転のきっかけになるのです。この心理的な切り替わりを、お子さまの成長に活かさない手はありません。
発達支援の現場では、年始を"スタートダッシュのチャンス"と捉えています。なぜなら、年末年始の区切りを経て、子どもたちの気持ちが切り替わりやすく、新しい習慣を受け入れやすい時期だからです。「去年はできなかったけど、今年はやってみよう」。こうした前向きな気持ちが、子どもたちの中に芽生えやすいのです。
本記事では、有限会社リラックスの発達支援の視点から、新年に伸ばしたい発達支援テーマ、支援現場での重点的な取り組み、そして1月から3月に特に伸びやすい力について、保護者の皆さまに分かりやすく詳しくご紹介します。新しい年を、お子さまの成長の年にするための実践的なヒントをお届けします。
なぜ年始は「習慣づくり」のチャンスなのか
年始は、生活や気持ちのリズムが一度リセットされるタイミングです。年末年始の冬休みを経て、日常が戻る1月。この時期には、新しい習慣を始める上で多くのメリットがあります。
新しい流れを受け入れやすい
人間の脳は、節目を意識すると、新しい行動を始めやすくなると言われています。「新年」という大きな節目は、「今までと違うことをしてもいい」という心理的な許可を与えてくれます。
子どもたちも、「今年から」「新しい年だから」という言葉に、特別な意味を感じます。この特別感を活かすことで、新しい習慣への抵抗が少なくなります。
「今年はこうしよう」と意識しやすい
新年の目標を立てる、新しいことを始める。こうした意識が、大人にも子どもにも生まれやすい時期です。この意識の高まりを、習慣づくりに活かします。
「今年は自分で着替えられるようになろう」「今年は朝、自分で起きられるようになろう」。こうした目標を、子どもと一緒に立てることで、意欲が高まります。
周囲の大人も関わりを見直しやすい
保護者の方自身も、「今年こそは」と関わり方を見直しやすい時期です。「去年は手を出しすぎたかな」「もう少し待ってあげよう」。こうした振り返りができるのも、年始ならではです。
また、園や学校、支援機関も、年始に年間の支援計画を見直します。この時期に相談することで、より良い連携が築けます。
環境の変化が少ない
進級や進学がある4月と違い、1月は大きな環境の変化がありません。環境は変わらず、習慣だけを変える。この「変化の少なさ」が、習慣づくりには適しています。
発達に特性のあるお子さんにとって、急な変化は負担になることもありますが、「少しずつ」「分かりやすく」整えていくことで、新しい習慣が定着しやすくなります。1月からの関わりは、その後の一年の土台づくりにつながります。
新年に意識したい発達支援テーマ① 生活リズム
まず大切にしたいのが、生活リズムの安定です。年末年始で崩れがちな睡眠や食事のリズムを、少しずつ整えていくことが、すべての成長の土台になります。
なぜ生活リズムが大切なのか
生活リズムが整うと、体調が安定します。十分な睡眠、規則正しい食事。これらが、心身の健康を支えます。
また、生活リズムが整うことで、情緒も安定します。イライラが減り、集中力が高まり、活動への意欲が出ます。
さらに、見通しを持って生活できるようになります。「この時間になったらこれをする」というリズムが身につくことで、安心感が生まれます。
支援現場での取り組み
活動開始・終了の時間を明確にする 児童発達支援や放課後等デイサービスでは、活動の開始と終了を明確に伝えます。「今から始めます」「終わりの時間です」。この明確さが、子どもたちに時間の感覚を育てます。
毎日同じ時間に活動を始め、同じ時間に終わる。このリズムが、生活の基盤になります。
見通しが持てるスケジュール提示 その日の活動を、視覚的に提示します。絵カードや写真を使ったスケジュール表で、「今日は何をするのか」「次は何か」がわかるようにします。
見通しが持てることで、不安が減り、落ち着いて活動に参加できます。
活動と休憩のバランス調整 動く時間と休む時間のバランスを大切にします。ずっと活動的では疲れてしまい、ずっと休んでいても物足りない。適度なバランスが、心地よいリズムを作ります。
子どもの様子を見ながら、活動の強度や長さを調整します。
家庭で意識したいポイント
朝起きる時間を一定に近づける 休日も平日も、できるだけ同じ時間に起きることを目指します。難しい場合でも、1時間以内の差に抑えましょう。
起床時間が安定すると、就寝時間も安定します。生活リズムの要は、朝にあります。
「次は何をするか」を言葉で伝える 「ご飯の後は歯磨きだよ」「お風呂の後は寝る時間だよ」。次にすることを事前に伝えることで、子どもは心の準備ができます。
急な変更がある時も、「今日は特別に〇〇するよ」と説明することで、混乱が減ります。
できた日はしっかり認める 「今日は時間通りに起きられたね」「ちゃんと朝ごはん食べられたね」。できたことを具体的に認めることで、次への意欲につながります。
できなかった日を責めるのではなく、できた日を喜ぶ。この姿勢が大切です。
視覚的なツールの活用 時計、タイマー、スケジュール表。目で見てわかるツールを使うことで、時間の感覚が育ちます。
新年に意識したい発達支援テーマ② 切り替えの力
1月から3月は、進級・進学を意識し始める時期でもあります。そのため、「切り替えの力」を育てることがとても重要になります。遊びから学習へ、家から学校へ。様々な場面で切り替えが求められる学校生活に向けて、今から準備を始めましょう。
なぜ切り替えの力が大切なのか
小学校では、45分の授業と休み時間が交互に来ます。遊びモードから学習モードへ、素早く切り替える力が求められます。
また、楽しい活動を途中で終わらせて、次の活動に移る。この切り替えが、集団生活では頻繁に起こります。
切り替えが苦手だと、活動に乗り遅れたり、気持ちが不安定になったりします。だからこそ、今から少しずつ練習することが大切です。
支援現場での取り組み
活動前後の合図を統一する 「始まりのベル」「終わりの音楽」など、活動の切り替えを知らせる合図を統一します。毎回同じ合図を使うことで、子どもたちは「この音が聞こえたら切り替える」と学びます。
視覚的な終了サインを使う タイマー、砂時計、時計の針。目で見て「あとどれくらい」がわかるツールを使います。
また、「あと3回」「あと2回」と数字で示すことも効果的です。
切り替えができた経験を積み重ねる 「今日はスムーズに切り替えられたね」「すぐに次の活動に入れたね」。できた経験を認めることで、切り替える力が育ちます。
最初はできなくても、少しずつ。職員がサポートしながら、成功体験を積み重ねます。
段階的な終了の伝え方 いきなり「終わり」ではなく、「あと5分」「あと3分」「あと1分」と段階的に伝えます。心の準備ができることで、切り替えやすくなります。
家庭での工夫
終わりを事前に伝える 「もうすぐご飯だから、そろそろ終わりにしようね」。いきなり終わらせるのではなく、事前に予告します。
「あと〇分」を一緒に確認する 時計やタイマーを見せながら、「長い針が6になったら終わりだよ」と伝えます。視覚的に確認できることで、納得しやすくなります。
切り替えられたことを具体的に褒める 「今日はすぐにお風呂に入れたね、えらかったね」「遊びを終わりにできたね、すごいね」。具体的に褒めることで、次への意欲が高まります。
切り替えのルーティンを作る 遊びが終わったら片付け、片付けが終わったら手を洗う。このようなルーティンを作ることで、自然な切り替えができます。
新年に意識したい発達支援テーマ③ 自分でやってみる力
年始は「やってみよう」という気持ちが芽生えやすい時期です。新年の目標として「自分でできることを増やそう」と意識することで、自立への一歩が踏み出せます。身の回りのことを自分でやってみる経験を大切にします。
なぜ自分でやる経験が大切なのか
自分でできることが増えると、自信がつきます。「自分にもできる」という感覚が、自己肯定感を育てます。
また、小学校では、自分のことは自分でする場面が多くあります。準備、片付け、着替え。今から練習しておくことで、入学後の不安が減ります。
さらに、自分でやる経験を通じて、計画性や問題解決能力も育ちます。
支援現場での取り組み
できる工程だけを任せる 全部を一人でやるのは難しくても、一部だけならできる。例えば、靴を履く時、「ベルトをとめる」部分だけを自分でやってもらう。
できる部分を少しずつ増やしていくことで、最終的に全部できるようになります。
成功しやすい環境設定 自分でできるよう、環境を整えます。手が届く高さに物を置く、わかりやすく収納する、手順を視覚的に示す。
環境を整えることで、子どもは自分で動きやすくなります。
失敗してもやり直せる関わり 失敗を責めず、「もう一回やってみようか」と励まします。失敗は学びのチャンス。やり直せる安心感が、挑戦する勇気を育てます。
「手伝って」を言える環境 全部一人でできなくてもいい。困った時に「手伝って」と言えることも、大切なスキルです。
家庭での関わり
手を出しすぎず見守る つい手を出したくなりますが、待つことも大切です。時間がかかっても、自分でやらせてみる。この経験が、自立を育てます。
時間に余裕をもつ 急いでいる時は、つい親がやってしまいます。でも、時間に余裕がある時は、子どもに任せてみましょう。
朝の支度も、30分早く起きることで、子どもが自分でやる時間を確保できます。
結果より過程を認める 完璧にできなくても、「やってみたこと」を認めます。「自分でやろうとしたね」「頑張ったね」。過程を認めることが、次への意欲につながります。
小さなステップで いきなり全部は難しいので、小さなステップで。今日はボタン一つ、明日はボタン二つ。少しずつ増やしていきます。
1月から3月で特に伸びやすい力とは
年始から春にかけての時期は、次のような力が伸びやすい傾向があります。この時期の特性を活かして、効果的な支援を行います。
集団の中で過ごす力
冬休みが終わり、園や学校が再開します。集団生活が戻ることで、友達と一緒に過ごす経験が増えます。
この時期に、順番を待つ、ルールを守る、友達と協力するといった社会性が育ちます。
指示を聞いて行動する力
進級・進学を前に、「話を聞いて動く」練習が増えます。先生の話を聞く、指示に従う。こうした経験を積み重ねることで、指示理解の力が育ちます。
自分の気持ちを伝えようとする力
新しい年を迎え、「今年はこうしたい」という思いが子どもたちの中にも芽生えます。この思いを言葉にする練習をすることで、コミュニケーション力が育ちます。
「〇〇したい」「〇〇が嫌」。自分の気持ちを伝えられることは、とても大切です。
小さな成功体験を積み重ねる力
新年の目標を立て、それを達成する。小さな成功体験を積み重ねることで、「やればできる」という自己効力感が育ちます。
支援現場では、この時期に「できた経験」を意識的に増やし、次のステップへの自信につなげています。一つできたら、次はもう少し難しいことに挑戦。この積み重ねが、確かな成長を生みます。
見通しを持って行動する力
年度末に向けて、「もうすぐ〇年生」「もうすぐ小学生」という意識が高まります。この見通しを持つことで、目標に向かって行動する力が育ちます。
支援現場と家庭での役割を整理
発達支援の場と家庭、それぞれに役割があります。両方が連携することで、子どもの成長は加速します。
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視点
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発達支援の場
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家庭
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連携のポイント
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習慣づくり
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構造化された環境で練習
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継続的な関わりで定着
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支援の場で学んだことを家で実践
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声かけ
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具体的・肯定的・専門的
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共感・ねぎらい・無条件の愛情
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同じ言葉で褒めることで一貫性
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目標
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次の成長を見据えた支援
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安心感を支える関わり
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情報を共有し、同じ方向を向く
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強み
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集団での練習、客観的評価
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個別の丁寧な関わり
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両方の良さを活かす
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どちらか一方だけでなく、両方が協力することで、最大の効果が得られます。
スタートダッシュは「頑張りすぎない」ことが大切
新年は「しっかりやらなきゃ」「今年こそは」と力が入りがちです。目標を高く設定し、毎日完璧にこなそうとする。しかし、頑張りすぎは長続きしません。
無理のない目標設定
達成可能な、小さな目標から始めましょう。「毎日7時に起きる」ではなく、「週に3日、7時に起きる」。ハードルを下げることで、継続しやすくなります。
完璧を目指さない
できない日があっても大丈夫。大切なのは、小さな習慣を積み重ねることです。できなかった日があっても、また次の日から始めればいいのです。
7割できたら上出来。そのくらいの気持ちで、長く続けることを優先しましょう。
子どものペースを尊重
大人の都合で急かすのではなく、子どものペースを尊重します。「もう少しゆっくりでいいよ」「焦らなくて大丈夫」。そんな声かけが、子どもの安心感を育てます。
小さな成功を喜ぶ
「今日は自分で靴が履けた」「朝、自分で起きられた」。小さな成功を、一緒に喜びましょう。この喜びの共有が、次への意欲を生みます。
リラックスでの具体的な支援
有限会社リラックスでは、新年の時期に次のような支援を強化しています。
個別支援計画の見直し
年始に、一人ひとりの個別支援計画を見直します。「去年はここまで成長した」「今年はこれを目指そう」。明確な目標を立てることで、支援の方向性が定まります。
保護者との面談
年始に保護者の方と面談を行い、家庭での様子や今年の目標を共有します。家庭と支援の場で、同じ方向を向くことが大切です。
環境の見直し
子どもたちの成長に合わせて、環境を見直します。去年は手が届かなかった場所も、今年は届くかもしれない。成長に合わせた環境調整が、自立を促します。
職員研修
職員も、新年に研修を行います。最新の支援方法を学び、より良い支援を提供できるよう、常に学び続けています。
保護者の方へのメッセージ
新年は、新しいことを始める絶好のチャンスです。でも、焦る必要はありません。お子さまのペースで、できることから一つずつ。
「今年こそは」という気持ちは素晴らしいですが、完璧を目指す必要はありません。小さな一歩が、やがて大きな成長につながります。
困った時、迷った時は、一人で抱え込まず、相談してください。リラックスは、いつでも保護者の皆さまの味方です。
おわりに
新年のスタートは、子どもの成長を支える大切なチャンスです。習慣づくり、切り替え、自立への一歩。これらを焦らず、丁寧に積み重ねることで、1年の土台がしっかりと育っていきます。
大切なのは、特別なことをすることではありません。毎日の小さな積み重ね、できたことを認める声かけ、子どものペースを尊重する姿勢。そうした日常の関わりが、確かな成長を生みます。
有限会社リラックスでは、年始の不安や悩みに寄り添いながら、一人ひとりに合った発達支援を行っています。児童発達支援から放課後等デイサービス、そして学校卒業後の生活介護や就労支援まで。一生涯にわたる支援を提供する中で、新年の目標設定と習慣づくりは、毎年大切にしている取り組みです。
見学やご相談も随時受け付けておりますので、「新年から何を意識すればいいか分からない」「うちの子に合った目標の立て方を知りたい」と感じた際は、ぜひお気軽にご相談ください。
地域に根ざした発達支援を通して、子どもたちとご家族の一年が、安心してスタートできるよう支えていきます。
新しい年が、お子さまとご家族にとって、成長と喜びに満ちた一年になりますように。