
はじめに
「小学校入学まで、あと少し」。年が明けると、就学前のお子さんをもつ保護者の皆さまは、期待と同時に不安を感じやすくなります。ランドセルのCMが流れ、入学用品の準備が始まり、周りの子どもたちが「もうひらがな全部書けるよ」「足し算できるよ」という話を聞くたびに、焦りが募ります。
「うちの子は学校生活についていけるだろうか」「今からでも準備は間に合うの?」「何をすればいいのかわからない」「周りの子と比べて遅れているのでは」。こうした声は、決して珍しいものではありません。特に、発達に特性のあるお子さまをもつ保護者の方は、より強い不安を感じていることでしょう。
しかし、安心してください。実は、就学準備は特別な勉強を始めることではありません。ドリルを何冊もこなすことでも、塾に通わせることでもありません。児童発達支援の現場では、1月からの時期を「心と生活を整える大切な準備期間」と捉えています。
本記事では、有限会社リラックスの児童発達支援の視点から、就学に必要な力の整理、冬から無理なく始められる準備方法、そして具体的な支援内容について、就学前の保護者の方に分かりやすく詳しくご紹介します。不安を少しでも和らげ、お子さまが自信を持って小学校生活をスタートできるよう、実践的なヒントをお届けします。
就学に向けて必要とされる力とは?
「就学準備」と聞くと、読み書きや計算を思い浮かべる方も多いかもしれません。「ひらがなは全部読めないといけない」「数字は100まで数えられないと」「時計が読めないと困る」。こうした学習面のスキルに注目しがちです。
しかし、小学校の先生方に話を聞くと、入学時に本当に大切にしてほしいのは、学習スキルよりも「生活の土台となる力」だと言います。小学校生活で本当に大切になるのは、次のような基礎的な力です。
生活リズムを整える力
規則正しい生活習慣 毎日決まった時間に起きる、朝ごはんを食べる、決まった時間に寝る。この基本的なリズムが、学校生活の基盤になります。
小学校は、朝8時頃に始まり、午後まで続きます。この長い時間を元気に過ごすためには、十分な睡眠と規則正しい食事が欠かせません。
体調管理の感覚 「お腹が痛い」「頭が痛い」「疲れた」。自分の体調に気づき、伝えられることが大切です。無理をして我慢してしまうと、大きな体調不良につながります。
話を聞き、切り替える力
先生の話を聞く姿勢 小学校では、先生が話す時間が増えます。全員に向けて話す指示を聞き取り、自分がどう動けばいいか理解する。この力が求められます。
完璧に聞けなくても大丈夫。「先生が話している時は静かにする」「先生の方を見る」。この基本的な姿勢があれば十分です。
活動の切り替え 遊びから学習へ、学習から休み時間へ。小学校では、様々な場面の切り替えが必要です。すぐに切り替えられなくても、少しずつ気持ちを切り替えていく練習が大切です。
自分の気持ちを伝えようとする力
困った時に助けを求める 「わからない」「手伝ってほしい」「トイレに行きたい」。こうした言葉で助けを求められることが、とても重要です。
言葉で伝えるのが難しい場合は、ジェスチャーやカードを使う方法もあります。何らかの形で、自分の気持ちを伝えようとする姿勢が大切です。
嫌なことを伝える 嫌なことがあった時、我慢するだけでなく、「嫌だ」と伝えられることも大切です。もちろん、暴力ではなく、言葉で。
集団の中で過ごす経験
友達と一緒に過ごす 一人で遊ぶのが好きでも大丈夫。でも、集団の中にいることに慣れておくことは大切です。一緒に活動する、同じ空間にいる。その経験が、学校生活をスムーズにします。
順番を待つ、ルールを守る 順番を待つ、おもちゃを譲る、ルールを守る。こうした社会性の基礎が、学校生活で求められます。
身の回りのことを自分でやってみる力
自分で準備する 朝の支度、持ち物の準備、片付け。全部一人でできなくても、「自分でやってみよう」とする姿勢が大切です。
トイレや手洗い 一人でトイレに行ける、手を洗える。こうした基本的な生活動作が、学校生活では必要です。
着替えや食事 体操着への着替え、給食の準備。時間内に、ある程度自分でできることが求められます。
これらは一朝一夕で身につくものではありません。だからこそ、1月から少しずつ意識していくことが大切です。焦らず、お子さまのペースで、できることから始めましょう。
なぜ「1月から」の就学準備が大切なのか
「もう1月だから遅い」ではなく、「1月だからちょうどいい」。この時期には、就学準備を始める上で多くのメリットがあります。
気持ちに余裕をもって進められる
4月まであと3ヶ月。この期間は、焦らずに準備を進めるのに適しています。4月直前になって急に準備を始めると、親子ともに焦りが生まれ、かえってストレスになります。
1月から始めれば、ゆっくりとしたペースで、無理なく習慣を積み重ねられます。
生活リズムを安定させやすい
冬休みが終わり、日常のリズムが戻る時期です。この安定した生活の中で、少しずつ小学校を意識した習慣を取り入れることができます。
年末年始の乱れたリズムを整え直すこの時期は、新しい習慣を始めるのに最適です。
不安やつまずきを早めに調整できる
実際に準備を始めてみると、「ここが難しい」「これが苦手」という点が見えてきます。4月までに時間があれば、その部分を重点的にサポートできます。
早めに課題に気づくことで、入学前に対策を立てられます。
園生活の中で練習できる
1月から3月は、まだ園生活が続いています。園での集団生活の中で、小学校を意識した行動を練習できます。園の先生にも相談しやすい時期です。
子どもの気持ちを整える時間がある
小学校への期待と不安。この複雑な気持ちに寄り添う時間が必要です。急かすのではなく、じっくりと話を聞き、不安を和らげる。そのための時間が、1月から3月にはあります。
児童発達支援の現場では、この時期から「小学校を意識した関わり」を徐々に取り入れ、子どもが安心して次のステップに進めるよう支援しています。
冬から始める就学準備の具体例(家庭編)
ご家庭でできる準備は、決して難しいものではありません。ポイントは「完璧を目指さない」ことです。7割できたら上出来。そのくらいの気持ちで、取り組んでください。
生活面の準備
朝起きる時間を平日と同じに近づける 小学校の始業時刻に間に合うよう、逆算して起床時間を設定します。例えば、8時に学校に着くためには、7時には家を出る。そのためには6時半には起きる。
いきなり早起きは難しいので、15分ずつ早めていくなど、段階的に調整します。
自分で身支度をする時間を確保する 朝の支度を、できるだけ子ども自身にさせてみます。全部は無理でも、一部だけでも。「自分で着替える」「自分でカバンを準備する」。小さなことから始めます。
最初は時間がかかります。でも、待つことが大切です。急かさず、見守る時間を作りましょう。
学校を想定した時間の流れを意識する 朝起きて、朝食を食べて、身支度をして、家を出る。この一連の流れを、時間を意識しながら行います。
時計を見ながら「7時だね、朝ごはんの時間だよ」と声をかけることで、時間の感覚が育ちます。
トイレや手洗いの習慣 学校では、休み時間にトイレに行きます。「トイレに行く?」と聞かれた時、行っておく習慣をつけましょう。
手洗いも、自分で石鹸を使って洗える練習をします。
早寝早起きの習慣 夜は9時までに寝る、朝は7時までに起きる。この習慣が、学校生活の基盤になります。
気持ちの準備
「小学校ではこんなことをするよ」と話題に出す 小学校への期待を膨らませるよう、ポジティブな話をします。「給食が食べられるよ」「新しい友達ができるよ」「楽しい勉強があるよ」。
絵本や写真を使って、小学校のイメージを伝えるのも効果的です。
不安な気持ちを否定せずに聞く 「学校、怖い」「行きたくない」。こうした不安を口にした時、否定せず受け止めます。「そうか、不安なんだね」「どんなところが心配なの?」と聞きます。
不安を言葉にすることで、気持ちが整理されます。
できていることを言葉にして認める 「自分で着替えられたね」「朝、時間通りに起きられたね」「友達に優しくできたね」。できていることを具体的に褒めます。
認められることで、自信がつきます。
小学校の見学に行く 可能であれば、入学予定の小学校を見学します。校舎を見る、教室を見る。実際の場所を知ることで、不安が和らぎます。
ランドセルや文房具の準備を一緒にする ランドセルを選ぶ、筆箱を選ぶ。準備の過程に子どもを参加させることで、入学への実感と期待が高まります。
学習面の準備
焦って詰め込む必要はありませんが、少しずつ慣れておくと安心です。
ひらがなに触れる機会を増やす 絵本を読む、名前を書いてみる、看板の文字を読んでみる。日常の中で、文字に親しむ機会を作ります。
全部書けなくても大丈夫。自分の名前が読める、書けることを目指しましょう。
数に親しむ おやつを数える、階段を数えながら上る、お買い物ごっこをする。遊びの中で、数に触れます。
100まで数えられなくても大丈夫。10くらいまでの数がわかれば十分です。
机に向かう習慣 1日10分でいいので、机に向かって何かをする時間を作ります。お絵かき、塗り絵、簡単なプリント。内容よりも、「机に向かう」という習慣が大切です。
社会性の準備
挨拶の練習 「おはようございます」「さようなら」「ありがとうございます」。基本的な挨拶ができるよう練習します。
友達との関わり 公園や児童館で、他の子と一緒に遊ぶ機会を作ります。トラブルがあっても、それも学びです。
順番を待つ練習 遊具の順番、レジの順番。日常生活の中で、順番を待つ経験を積みます。
日常の中で少し意識するだけでも、就学への土台づくりにつながります。特別なことをする必要はありません。毎日の生活の中に、少しずつ小学校を意識した要素を取り入れていくだけで十分です。
児童発達支援で行っている就学準備支援
有限会社リラックスの児童発達支援では、就学前の時期に次のような支援を行っています。専門的な視点から、お子さま一人ひとりに合わせた支援を提供します。
小集団活動での練習
順番を待つ経験 おもちゃの順番、活動の順番。小集団の中で、自然と順番を待つ経験を積みます。待つことが苦手な子には、「あと〇人」と視覚的に示すなど、工夫をします。
話を聞く練習 職員が話している時は静かにする、話している人の方を見る。こうした基本的な姿勢を、小集団の中で練習します。
最初は短い時間から。5分座って話を聞けたら、次は10分へ。段階的に延ばしていきます。
ルールのある遊び 簡単なゲームやルールのある遊びを通じて、ルールを守る経験を積みます。負けることを経験し、気持ちの切り替えを学びます。
友達との関わり 一緒に遊ぶ、おもちゃを貸し借りする、協力して作業する。こうした経験を、職員のサポートのもとで積み重ねます。
生活スキルのサポート
持ち物の管理 自分のカバンから必要なものを出す、使ったものをしまう。こうした基本的な動作を練習します。
視覚的に「ここに置く」とわかるよう、写真やマークで示すこともあります。
片付けの練習 活動が終わったら片付ける。この習慣を、毎回の活動で練習します。「元の場所に戻す」という感覚を育てます。
着替えの練習 上着を脱ぐ、靴を履く。時間をかけてでも、自分でやってみる経験を大切にします。
食事の練習 お弁当を自分で食べる、決められた時間内に食べる。給食を想定した練習をします。
気持ちの切り替え支援
活動の始まりと終わりを分かりやすく伝える 「今から〇〇をします」「終わりの時間です」。明確に伝えることで、切り替えがしやすくなります。
タイマーや音楽を使った切り替え 「この音楽が終わったら片付けの時間」など、視覚・聴覚的な手がかりを使います。
見通しを持たせる スケジュールを視覚的に示し、「次は何をするか」がわかるようにします。見通しがあると、切り替えやすくなります。
個別の配慮
一人ひとりの特性に合わせて、個別の配慮をします。
感覚過敏がある子には、刺激を調整した環境を用意します。多動傾向がある子には、適度に身体を動かす時間を確保します。不安が強い子には、細かく説明し、安心できる環境を作ります。
保護者との情報共有
家庭での様子や不安を共有し、一貫した関わりができるよう連携を大切にしています。
定期的な面談で、「家ではこうです」「支援の場ではこうです」と情報を交換します。家庭と支援の場で同じ関わりをすることで、子どもにとって一貫性が生まれます。
保護者の方の不安にも寄り添います。「こんなことが心配」「ここができていない」。そうした悩みを一緒に考え、解決策を探します。
家庭と支援での役割の違い
家庭と児童発達支援、それぞれに役割があります。どちらか一方だけでなく、両方が連携することで、子どもは安心して成長していきます。
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視点
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児童発達支援
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家庭
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連携のポイント
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目的
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就学を見据えた土台づくり
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安心感の提供・情緒の安定
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両方が必要
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環境
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小集団・構造化された空間
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日常生活・リラックスできる場
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違う環境での経験が相乗効果を生む
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関わり
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専門的支援・客観的評価
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温かい見守り・無条件の愛情
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支援の場で学んだことを家で実践
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強み
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集団での社会性練習
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個別の丁寧な関わり
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情報を共有し、一貫した支援
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どちらか一方だけでなく、両方が連携することで、子どもは安心して成長していきます。
「今からでも遅くない」就学準備
「もう1月だから遅い」と思う必要はありません。1月からの就学準備は、決して遅くありません。むしろ、この時期だからこそ見えてくる課題や強みがあります。
焦らないことが一番大切
焦って詰め込むと、親子ともに疲れてしまいます。できないことに目を向けるのではなく、「できていること」「伸びているところ」を大切にすることが、子どもの自信につながります。
小さな成長を喜ぶ
「昨日より5分早く起きられた」「自分で靴が履けた」「友達におもちゃを貸せた」。小さな成長を見つけて、一緒に喜びましょう。
比較しない
「〇〇ちゃんはもうひらがな全部書けるのに」。他の子と比較しても、意味がありません。大切なのは、その子なりの成長です。
完璧を目指さない
全部できる必要はありません。少しずつ、できることを増やしていけばいいのです。
入学後も続く支援
小学校に入学したら、すべて終わりではありません。リラックスでは、放課後等デイサービスを通じて、入学後も継続的な支援を提供しています。
小学校生活での困りごと、宿題のサポート、友達関係の悩み。様々な場面で、子どもたちを支え続けます。
一生涯にわたる支援を提供する私たちにとって、就学は一つの通過点です。その先も、ずっと寄り添い続けます。
保護者の方へのメッセージ
就学は、子どもにとっても保護者にとっても大きな節目です。不安を感じるのは自然なことです。「ちゃんと準備できているだろうか」「うちの子は大丈夫だろうか」。そう思うのは、お子さんを大切に思っているからこそです。
一人で抱え込まず、支援の力を上手に活用することも大切な準備の一つです。困った時は、遠慮なく相談してください。
おわりに
就学は、子どもにとっても保護者にとっても大きな節目です。不安もあれば、期待もある。複雑な気持ちを抱えるのは、当然のことです。
大切なのは、焦らないこと、比較しないこと、完璧を目指さないこと。お子さまのペースで、できることから一つずつ。それが、最良の就学準備です。
有限会社リラックスでは、就学前のご相談や見学を随時受け付けています。「今、何を大切にすればいいのか分からない」「うちの子に合った準備方法を知りたい」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。
一人ひとりの子どもに合わせた、オーダーメイドの支援を提供します。不安を一緒に解消し、自信を持って入学の日を迎えられるよう、全力でサポートします。
地域に寄り添い、子ども一人ひとりのペースを大切にした就学準備支援を、これからも続けていきます。
新しいスタートの日まで、一緒に歩んでいきましょう。