
はじめに
「学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛いと言う」「準備はするけれど玄関で止まってしまう」「泣いて訴える」「布団から出てこない」――冬休み明け、このような"登校しぶり"に悩む保護者の方は少なくありません。
楽しかった冬休みが終わり、また学校生活が始まる。大人でも「仕事に行きたくないな」と思う月曜日があるように、子どもたちにとっても、休み明けは大きな気持ちの切り替えが必要な時期です。特に長期休み明けは、生活リズムや気持ちの切り替えが難しく、子どもにとって大きな負担がかかる時期です。
保護者の方は、「このまま不登校になってしまうのでは」「私の育て方が悪かったのか」「どう接すればいいのかわからない」と不安と焦りでいっぱいになるかもしれません。しかし、登校しぶりは決して珍しいことではなく、多くの子どもが経験する自然な反応なのです。
有限会社リラックスの児童発達支援・放課後等デイサービスの現場でも、冬休み明けは登校への不安や戸惑いが表れやすい時期として、特に丁寧な支援を心がけています。一生涯にわたる支援を提供する中で、学齢期の登校支援は、子どもたちの学校生活を支える重要な取り組みです。
本記事では、冬休み明けに登校しぶりが起きやすい理由、小さな成功体験を積み重ねる支援の考え方、そして家庭と支援が連携するためのポイントを、保護者の皆さまに分かりやすく詳しくお伝えします。
冬休み明けに登校しぶりが起きやすい理由
登校しぶりは、決して珍しいことではありません。文部科学省の調査でも、長期休み明けに登校を渋る子どもが増えることが報告されています。冬休み明けには、次のような要因が重なりやすくなります。
生活リズムの変化
起床時間・睡眠時間のズレ 冬休み中は、夜更かしや朝寝坊が習慣になりがちです。楽しい番組を見たり、ゲームをしたり。気づけば就寝時間が遅くなり、朝もゆっくり起きる生活に。
この生活リズムを、いきなり学校モードに戻すのは大変です。早起きが辛い、眠い、体がだるい。こうした身体的な負担が、登校への抵抗につながります。
食事時間の乱れ 休み中は食事の時間も不規則になりがちです。朝ごはんを食べない、おやつの時間が長い。こうした乱れも、体調や気分に影響します。
楽しかった休みとのギャップ
自由な時間から管理された時間へ 冬休みは、自分の好きなことができる自由な時間です。遊びたい時に遊び、休みたい時に休む。この自由から、時間割に沿った学校生活への切り替えは、大きなギャップを感じさせます。
家族との時間から集団生活へ 冬休みは家族と過ごす時間が増えます。温かい家庭の雰囲気から、緊張感のある学校の集団生活へ。この変化も、子どもにとっては負担です。
楽しかった思い出との対比 クリスマス、お正月、親戚との集まり。楽しかった思い出が強いほど、日常への戻りが辛く感じられます。
学校での人間関係や学習への不安
友達とうまくやれるか 「久しぶりに会って、ちゃんと話せるかな」「仲良しグループに入れるかな」「休み中に何か変わっていないかな」。友達関係への不安は、登校しぶりの大きな要因です。
勉強についていけるか 「休み中、全然勉強してない」「宿題が終わっていない」「次の授業についていけるか心配」。学習面での不安も、学校へ足が向かない理由になります。
先生に怒られないか 宿題を忘れた、持ち物を準備できていない。こうした不安が、登校への抵抗になることもあります。
寒さや体調不良による意欲低下
寒くて布団から出られない 冬の朝は寒く、暖かい布団から出るのが辛いものです。大人でも辛いこの感覚が、子どもにとってはさらに大きな障壁になります。
風邪や体調不良 冬は風邪をひきやすい季節です。本当に体調が悪い場合もあれば、不安から身体症状が出る場合もあります。頭痛、腹痛、吐き気。こうした症状が、登校を妨げます。
「また頑張らなきゃ」というプレッシャー
新学期への期待と不安 「3学期は頑張ろう」「今年はもっとできるようになりたい」。こうした期待は、同時にプレッシャーにもなります。「頑張らなきゃ」という気持ちが、かえって重荷になることもあります。
進級・進学への不安 「もうすぐ〇年生」「もうすぐ中学生」。次のステップへの期待と不安が、複雑に入り混じります。
発達に特性のあるお子さんの場合、環境の切り替えに時間がかかることも多く、不安や緊張が「行きたくない」という行動として表れやすくなります。見通しが立ちにくい、変化への適応が苦手、感覚過敏で学校環境が辛い。こうした特性が、登校しぶりを引き起こすこともあります。
登校しぶりは"心のサイン"
登校しぶりは、甘えや怠けではありません。「学校に行きたくない」という言葉や行動の裏には、必ず理由があります。多くの場合、それは次のような心のサインです。
不安をうまく言葉にできない
子どもは、自分の気持ちを言語化するのが苦手です。「なんとなく嫌」「行きたくない理由はわからない」。こうした曖昧な表現しかできないことも多いのです。
でも、言葉にできないからといって、不安がないわけではありません。むしろ、言葉にできないほど複雑で、大きな不安を抱えているのかもしれません。
頑張りすぎて疲れている
真面目な子ほど、学校で頑張りすぎています。授業中はずっと集中して、休み時間も気を使って、帰ってきたらぐったり。こうした頑張りが積み重なると、心も体も疲れてしまいます。
冬休みで少し休んだことで、「もうこれ以上頑張れない」と体が悲鳴を上げているのかもしれません。
助けてほしい気持ちがある
「行きたくない」は、「助けて」のサインです。「誰か気づいて」「話を聞いて」「支えてほしい」。そんな気持ちが、登校しぶりという形で表れています。
このサインに気づき、適切に対応することが、子どもを救うことにつながります。
自分でもどうしていいかわからない
子ども自身も、なぜ行きたくないのか、どうすればいいのか、わからないことが多いのです。「行かなきゃいけないのはわかってる。でも、どうしても行けない」。この葛藤が、子どもを苦しめています。
登校しぶりは、このような心のサインです。まずは「そう感じているんだね」「辛いんだね」と受け止めることが、支援の第一歩になります。否定したり、叱ったりするのではなく、まずは受け止める。この姿勢が何より大切です。
小さな成功体験を積み重ねる支援
登校しぶりへの対応で大切なのは、「一気に元通り」を目指さないことです。「明日から毎日学校に行けるようにしよう」と焦ると、かえってプレッシャーになります。
有限会社リラックスの支援現場では、小さな成功体験の積み重ねを重視しています。大きな目標ではなく、小さな一歩。その積み重ねが、確かな成長につながります。
支援現場で意識していること
できた部分に注目する 「学校に行けたか」だけを見るのではなく、その過程に注目します。
準備ができた、朝起きられた、制服に着替えた、玄関まで行けた、校門まで行けた、教室に入れた、1時間だけ参加できた。こうした「できた部分」を見つけて、認めます。
結果だけでなく、プロセスを大切にする。この視点が、子どもの自信を育てます。
成功のハードルを低く設定する 最初から「一日学校にいる」ことを目指すのではなく、もっと小さな目標から始めます。
「朝、時間通りに起きる」「制服に着替える」「玄関を出る」「校門まで行く」「保健室に行く」「1時間だけ授業に出る」。
その子の状態に合わせて、達成可能な目標を設定します。小さな成功を積み重ねることで、少しずつ自信がつきます。
子どものペースを尊重する 「〇日までに行けるようにしよう」と期限を決めるのではなく、その子のペースを大切にします。
焦らせると、かえって抵抗が強くなります。「今日は無理だったけど、明日はどうかな」「ゆっくりでいいよ」。そんな声かけが、子どもの安心感を育てます。
否定的な言葉を使わない 「なんで行けないの」「みんな行ってるよ」「このままじゃダメだよ」。こうした言葉は、子どもを追い詰めます。
代わりに、「大丈夫だよ」「一緒に考えよう」「ゆっくりでいいからね」。肯定的で、支持的な言葉を使います。
選択肢を与える 「学校に行く」か「行かない」かの二択ではなく、「保健室に行く」「午後から行く」「好きな授業だけ出る」など、複数の選択肢を提示します。
選べることで、子どもは主体性を持てます。「自分で決めた」という感覚が、行動を促します。
「学校に行けたかどうか」だけで評価せず、その途中の行動をしっかり認めることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。一歩進んで二歩下がることもあります。でも、その一歩を認めることが大切です。
家庭でできる関わり方のポイント
ご家庭では、次のような関わりを意識してみてください。専門的な支援でなくても、日常の関わりの中でできることがたくさんあります。
無理に理由を聞き出さない
「なんで行きたくないの?」と問い詰めると、子どもは答えに困ります。自分でもわからない、言葉にできない。そんな時に問い詰められると、さらに追い詰められた気持ちになります。
話したい時に話せる雰囲気を作ることが大切です。「話したくなったら、いつでも聞くからね」と伝え、待つ姿勢を持ちましょう。
「行けなくても大丈夫」という安心感を伝える
「学校に行けなくても、あなたの価値は変わらない」「行けなくても、お母さん(お父さん)はあなたの味方だよ」。こうした安心感が、子どもの心を支えます。
学校に行くことが全てではありません。まずは心の安定が最優先です。
朝の流れをできるだけシンプルにする
朝の支度が複雑だと、それだけでハードルが上がります。できるだけシンプルにし、負担を減らします。
前日の夜に準備をする、朝食は簡単なものにする、服は選びやすいものを用意する。こうした工夫が、朝のストレスを軽減します。
行けた・行けなかったに関わらず労いの言葉をかける
学校に行けても、行けなくても、「今日もお疲れ様」「頑張ったね」と労います。
結果ではなく、その日を過ごしたこと自体を認める。この姿勢が、子どもの自己肯定感を支えます。
具体的な声かけの例
「今日は玄関まで行けたね、すごいよ」 「準備をしようとしたね、えらかったね」 「朝、起きられたね、頑張ったね」 「学校のことを話してくれてありがとう」 「辛かったね、よく言えたね」
こうした声かけは、子どもの自己肯定感を支えます。できた部分、頑張った部分を具体的に認めることが大切です。
してはいけない声かけ
「なんで行けないの」(責める) 「みんな行ってるよ」(比較する) 「このままじゃダメだよ」(脅す) 「甘えないで」(否定する) 「恥ずかしいよ」(羞恥心を刺激する)
こうした言葉は、子どもを追い詰めます。つい言ってしまいそうになりますが、ぐっとこらえましょう。
生活リズムを整える
登校できない日も、できるだけ規則正しい生活を心がけます。朝は決まった時間に起きる、食事は決まった時間に摂る。
生活リズムが乱れると、余計に登校が難しくなります。学校に行かない日も、生活の基盤は整えましょう。
好きなこと、得意なことに目を向ける
学校に行けないことばかりに注目するのではなく、好きなこと、得意なこと、家でできることに目を向けます。
絵を描く、本を読む、料理を手伝う。こうした活動を通じて、自己肯定感を保ちます。
支援と家庭の連携が安心につながる
登校しぶりへの対応は、家庭だけで抱え込む必要はありません。むしろ、一人で抱え込むことは避けるべきです。支援機関や学校と情報を共有することで、子どもにとって一貫した関わりが生まれます。
連携の重要性
情報の共有 家での様子、学校での様子、支援の場での様子。それぞれの情報を共有することで、子どもの全体像が見えてきます。
「家では元気なのに、学校では緊張している」「支援の場ではリラックスしているのに、家では不安定」。こうした違いがわかることで、適切な支援につながります。
一貫した対応 家庭、学校、支援の場で、対応がバラバラだと、子どもは混乱します。同じ方向を向いた支援が、子どもの安心感を作ります。
「みんなが自分のことをわかってくれている」「みんなが応援してくれている」。この実感が、子どもの力になります。
役割分担 それぞれの場所で、できることが違います。家庭は安心感を提供し、学校は学びの場を提供し、支援の場は専門的なサポートを提供する。
役割を分担することで、それぞれが無理なく子どもを支えられます。
支援と家庭の役割
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視点
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支援の場
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家庭
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学校
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連携のポイント
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行動の捉え方
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心の状態を専門的に理解
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気持ちを受け止める
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学習面・集団面を見る
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多角的に子どもを理解
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目標設定
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小さな成功を積む
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無理をさせない
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段階的な登校を支援
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共通の目標を持つ
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声かけ
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具体的な肯定
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安心の言葉
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励ましと理解
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一貫したメッセージ
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強み
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専門的知識と技術
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無条件の愛情
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集団の中での学び
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それぞれの強みを活かす
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連携が取れることで、「一人じゃない」という安心感が、子どもにも保護者にも生まれます。
具体的な連携方法
定期的な情報交換 面談、連絡帳、電話、メール。様々な方法で、定期的に情報を交換します。
支援計画の共有 個別の支援計画を、家庭、学校、支援の場で共有します。「今はこういう段階」「次はこれを目指す」。共通理解があることで、一貫した支援ができます。
困った時の相談窓口 「こんな時はどうすればいい?」と迷った時、すぐに相談できる窓口があることが大切です。リラックスでは、いつでも保護者の方の相談をお受けしています。
リラックスでの登校支援
有限会社リラックスの放課後等デイサービスでは、登校しぶりのあるお子さんへの支援も行っています。
安心できる居場所の提供
学校に行けない日も、デイには来られる。そんな「第三の居場所」としての役割を果たします。
家でも学校でもない、安心できる場所。そこで過ごすことで、心のエネルギーを充電できます。
小集団での社会性練習
学校は大きな集団で負担が大きくても、デイの小集団なら参加できる。そうした経験を積み重ねることで、少しずつ集団への抵抗が減ります。
成功体験の積み重ね
デイでの活動を通じて、「できた」「楽しかった」という経験を積みます。この成功体験が、自信となり、学校への一歩につながります。
保護者の方へのサポート
登校しぶりは、保護者の方も辛いものです。不安、焦り、自責の念。様々な感情を抱えています。
リラックスでは、保護者の方の気持ちにも寄り添います。相談に乗り、一緒に考え、支えます。
長期的な視点を持つ
登校しぶりは、すぐに解決するものではありません。時間がかかることもあります。でも、焦る必要はありません。
大切なのは、長期的な視点を持つことです。今すぐ学校に行けなくても、その子なりのペースで、少しずつ前に進んでいけばいいのです。
一歩進んで二歩下がることもあります。でも、その一歩を認め、次の一歩を待つ。この姿勢が、子どもの成長を支えます。
おわりに
冬休み明けの登校しぶりは、多くの家庭が経験する自然な反応です。決して珍しいことではなく、必ず乗り越えられるものです。
大切なのは、焦らず、比べず、その子なりのペースを尊重することです。「学校に行けないこと」に目を向けるのではなく、「その子が今、何を感じ、何を必要としているか」に目を向けることです。
一人で抱え込まず、周りの力を借りることも大切です。学校、支援機関、医療機関。様々な専門家の力を借りながら、チームで子どもを支えましょう。
有限会社リラックスでは、登校に不安を感じるお子さんや保護者の方の気持ちに寄り添いながら、安心できる支援を行っています。「どう関わればいいか分からない」「このままで大丈夫か不安」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。
一生涯にわたる支援を提供する中で、学齢期の登校支援は重要な位置を占めます。今の困難を乗り越えることが、将来の自立した生活の基盤になると信じています。
家庭と支援が手を取り合い、子どもがまた一歩前に進めるよう、これからも地域に根ざした支援を続けていきます。
子どもたちの笑顔が戻る日まで、一緒に歩んでいきましょう。